文化財の保存と活用

国宝釈迦如来坐像他10件 
文化財美術工芸品保存活用整備事業

大本山室生寺 寳物殿

収蔵される寺宝をしっかりと未来へ守り、
かつその価値を魅力的に伝える「守りながら魅せる」公開型収蔵庫の実現

プロジェクト概要

国宝釈迦如来坐像や両部大檀具をはじめとした大本室生寺伝来の貴重な宝物を納める宝物殿。収蔵される寺宝をしっかりと未来へ守り、かつその価値を魅力的に伝える「守りながら魅せる」公開活用型収蔵庫として、保存と公開の「両立と継続」を高い次元で実現しながら、そこにしかない特徴的な空間を創出しています。付帯事業として手前にある納経所・トイレ棟も含め一体的に設計を行っています。

所在地
奈良県宇陀市
事業主体
宗教法人 室生寺
事業年度
平成27年度~令和元年度
完工年月
平成31年3月
延床面積
収蔵庫:376.59㎡ 納経所・トイレ棟:113.40㎡
受託業務
建築設計・監理(収蔵・展示設備含む)

背景と課題

室生寺寳物殿は、東日本大震災を契機にその設置が検討され、平成27 年から具体的な設計検討に着手、平成31 年3 月に施設竣工。国宝木造釈迦如来坐像をはじめとした指定文化財の保存活用整備事業として『文化財(美術工芸品)保存施設、保存活用施設 設置・管理ハンドブック(平成27 年3 月文化庁文化財部美術学芸課)』の新基準に則り、文化庁、奈良県及び宇陀市の指導と助成を得て整備。

その設計検討においては、防災・防犯、保存環境確保の観点から文化財を安全に保管することを第一義の目的としながら、起伏に富む境内地のお堂を十分に参拝できない方々にも収蔵されるお像や文化財を拝観できるようにしたいとの室生寺の意向も有り、当初から公開活用型収蔵庫として保存と公開の両立が求められました。

解決策・実現策

具体的な設計検討-「守りながら魅せる」公開と保存の両立を目指して-

◆文化財を多重に包む建築計画

収蔵庫整備の基本として、外部からの負荷低減及び文化財IPM への配慮から、風除室、前室と二重三重に文化財を包んで守る平面計画とし、核心部となる公開型収蔵庫エリアについては、文化財に対して安定した保存環境を確保しながら、拝観者に対しては文化財の価値をより魅力的に伝えることを目指し各種検討を行っています。

◆サファリパーク型公開方式ともいうべき収蔵庫プラン

大型のお像や大檀具類を含む室生寺所蔵の文化財をできるだけ物理的に安全な環境におくこと、実際の展示替えや点検・清掃など環境管理にかかるお寺の運用負荷等を考慮の上協議検討を重ねた結果、従来のお堂型公開方式(オープン展示)でも、博物館型公開方式(ケース展示)でもない、サファリパーク型公開方式ともいうべき公開型収蔵庫のプランに行きつきました。公開されるお像等の文化財が、できるだけ安定した環境でのびのびと過ごすことができる広い空間を確保したプランとしています。

◆展示空間としての鑑賞性を高める工夫

拝観者の観覧スペースをある程度絞る代わりに、特注の大判ガラス間仕切りによって一体的に収蔵庫そのものを見せるプランとしています。その上で、奥の一般収蔵スペースとの間の格子間仕切や手前から調整が可能な照明計画等により、展示空間としても文化財の鑑賞性を高め、魅力を引き出す工夫を行っています。

※写真撮影/三好和義
※紹介原稿:2020文化財保存修復学会 ポスター発表より一部引用

設計スタッフ

小林 宜文デザイン・設計

神社仏閣に関わる国指定文化財の保存環境整備に多く携わり、博物館、美術館の設立に関わるコンサルティングを担当。
伝統文化からサブカルチャーまで文化芸術が社会そして生活に幅広く取り入れられるために尽力。

一ノ瀬 裕行デザイン・設計

文化財の保存公開環境整備を専門として、博物館や社寺の宝物殿等の基礎調査、計画、設計・監理等を担当。文化財のおかれる現況と顧客ニーズの丁寧な把握を元に、文化財と人にとってより最適な環境の実現に取りくむ。

植松 みさとデザイン・設計

使いやすいバックヤードの整備を目指して、美術館博物館や寺社宝物殿等の収蔵庫設計を担当する文化財博士。基礎調査とユーザーとのコミュニケーションを大切に、施設と資料の特性に合わせた保存管理環境を提案。